2016-01-01から1年間の記事一覧

『あの教室』MV - 教室で『箱男』になるということ -

寡聞にして乃木坂46のMVをあまりみたことがなく、しかし『あの教室』につよい印象をうけた。以下、そのプロットを読解し、その仮説から映像表現の意味を探る。さらにそののち、じっさいのコードと歌詞、映像と対照する。 プロットは次のようなものだ。齋藤飛…

『ゲーデル、エッシャー、バッハ』あるいは『みすてぃっく・あい』

"「この手紙を発見する前は、一冊の本がどうして無限であり得るのか、疑問に思っていました。循環する、円環的な本いがいのあり方を思いつかなかったのです。最後のページが最初のページと同一で、限りなく接続する可能性を持った本です。わたしはまた、『千…

『青い花』の表現技法とその意味

"『青みをおびた』(Bleute):ほかのどんな色も、優しさの、このような言語的形態を知らない。ノヴァーリス風の言葉。「非存在のように優しく青みをおびた死」(『笑いと忘却の書』)。"(ミラン・クンデラ著『小説の精神』所収『七十三語』浅野敏夫訳) 『…

『荊の城』と『オリバー・ツイスト』

独白をのぞき、『荊の城』は『オリバー・ツイスト』の観劇の場面ではじまる。本作はロンドンの下町を舞台にしており、主人公のスウは"Fingersimith"=スリであり、『オリバー・ツイスト』でオリバーが仲間にいれられる窃盗団の少年たちとおなじだ。付言すれば…

『ハーモニー』補論

SF

伊藤計劃著『虐殺器官』に"戦闘前に行われるカウンセリングと脳医学的処置によって、ぼくらは自分の感情や倫理を戦闘用にコンフィグする。そうすることでぼくたちは、任務と自分の倫理を器用に切り離すことができる。オーウェルなら二重思考(ダブルシンク)…